西東京人さん














Travels / Pat Metheny Group(1982年)













   Live / Donny Hathaway(1971年)
@Messages About Music/音楽に関するメッセージ
 音楽のすばらしさ、それはそのまま人間のすばらしさです。
 空気の振動にすぎない単なる物理現象を「音」としてとらえ、
 それを「音楽」として鑑賞して、
 さらにはそれに感動することさえできる能力を、
 持ち合わせているということですから。

AFavorite Musicians/好きなミュージシャン

 ベーシスト:
   アルフォンソ・ジョンソン、ウィーリー・ウィークス、
   ジャコ・パストリアス、ダリル・ジョーンズ、マーカス・ミラー、
   ルイス・ジョンソン
 ギタリスト:
   アルバート・コリンズ、ジェフ・ベック、タック・アンドレス、
   パット・メセニー、マーク・ノップラー、ローランド・バティスタ
 ドラマー:
   オマー・ハキム、デニス・チェンバース、バーナード・パーディー
 その他の楽器奏者:
   ジョージ・アダムス、ジョン・コルトレーン、
   ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィス、
   ローランド・カーク、ライル・メイズ
 コンポーザー:
   アントニオ・カルロス・ジョビン、モーリス・ラベル


BFavorite Instruments/好きな楽器
 やっぱりベースです。自分が弾いている楽器ですから。
 それも、ウッド・ベースよりも、エレクトリック・ベース。
 フレットの有無は問いません。
 どちらも好きです。

CHobby/趣味
 読書とバンド活動(ブルース・バンドやってます)

DFavorite Scenery/好きな風景

 大都市の夜景、“トロピカルな”風景、
 秋晴れの空とそれを背景にしているオレンジ色に熟した柿、
 ピカピカ光る雷雲。
 それから、「風景」と言えるかどうか分かりませんが、
 人工衛星やスペース・シャトルから撮影された
 地球のいろいろな場所の写真を見るのも好きです。


EFavorite Albums/あなたにとっての名盤

Live at Birdland / John Coltrane(1963年)

 生まれて初めて「本格的な」ジャズ喫茶に入った時に流れていたのが、
 このアルバム1曲目のAfro Blue。場所は高田馬場のイントロ。
 東京に出てきてまだ日も浅いある日のことだった。
 「ちょっとおしゃれで渋い、大人の音楽」。
 当時、ジャズに対して抱いていたイメージはこんな程度のものだった。
 ジャズ喫茶に行けば、これがちゃんと聴けると思った。
 ところが、分厚い鉄の扉を開けたとたん、
 そんな淡い期待は木っ端微塵に打ち砕かれた。
 耳に飛び込んできたのは、おしゃれで渋い音楽とは似ても似つかぬ、
 言ってみれば、生身の人間の叫び声のごとき音楽だった。そこはまったくの異空間。
 溢れ出る音で狭い店内は飽和状態だった。大音量で、しかもあの演奏である。
 その圧倒的な迫力にすっかり打ちのめされた。
 鬼気迫る演奏というのはああいうのを指して言うのだろう。
 無防備で臨んだ青二才、撃沈の図。
 音楽を聴いてうろたえるなんて経験をしたのは、
 後にも先にもこの時だけである。
 今でもときどきこの曲を聴くことがあるけれど、そのたびにつくづく感じるのが、
 一度限りの経験が持つその「かけがいのなさ」である。
 これから何度この曲を聴くことがあっても、
 どれも記憶の中にあるあのAfro Blueを超えることはないだろう。
 それはあの時の経験はあの時だけのものだからだ。

My Funny Valentine / Miles Davis(1964年)

 このアルバムを聴くまでは、My Funny Valentine と言えば、阿川泰子(懐かしい)だった。
 テレビで彼女が歌っているのを見たことがあったからだ。いい曲だなと思った。
 その後、何度かこの曲を聴いたことがあったけれど、
 たまたま耳にしたという程度に過ぎなかった。
 そんな素人のくせに、口では一丁前にジャズが好きだと言う。
 ジャズが好きだと言うからには、まずはマイルス・デイヴィスだ。で、何を買う?
 やっぱり、スタンダードで唯一メロディーを口ずさむことができる
 My Funny Valentineか。そう思って手に取ったのがこのアルバムだった。
 「初々しい」というか、「分かりやすい」というか、要するに新参者なのである。
 My Funny Valentineは好きな曲だったし、しかもマイルスがやっているということで、
 心躍らせながら針を落としたのを覚えている。
 ところが、あの有名なメロディーは最初にほんの少し出てくるだけで、
 あとは何だか「わけの分からない」アドリブがずっと続くばかり。とんだ肩透かしを食らった。
 頭の中に大きな「?」が浮かんで、しばらく消えなかった。
 おまけに、不遜にも、「散財」の二文字が頭をよぎる始末。
 僕の知っているMy Funny Valentineはいったいどこにある?
 思い起こせば、これがモード・ジャズとの出会いだった。
 その後、最初の「?」にめげることなく、フレーズひとつひとつをじっくり聴き込んだ。
 最初は何だかガマン比べのようであったが、そのうちに、
 のっぺりとして捉えどころがないように思えたその顔が、
 実は千変万化の表情を持っていることに気がついた
 生意気にもジャズが少し分かったような気がした。
 このアルバムで僕は「阿川泰子」から「マイルス・デイヴィス」へジャンプさせてもらった。


Travels / Pat Metheny Group(1982年)

 おそらく今までで一番、親しんだアルバムだと思う。文字通り愛聴盤である。
 理由のひとつは、ずいぶん前のことになるが、いっとき、90テープに録音して、
 毎晩、寝る前に聞いていたからである。
 さあ、寝るかという時、テープをガチャリと再生し、
 ほんのかすかに聞こえるというくらいまでボリュームを絞る。
 そうして、部屋の明かりを消して、ねぐらに潜り込むのだ。
 そんなわけで、このアルバムを聞くのは、いつもきまって床の中だった。
 だから、正確には「寝る前」というより「寝入る前」ということになる。
 シンと静まり返った真っ暗な空間に、どこからともなく音楽が流れてくるといった感じか。
 あたりの静けさがよりいっそう際立つ。
 いや、むしろ、そうして聞こえてくる音楽が静寂の一部になっているかのようだった。
 あまりの心地よさに、数曲で「昇天」ということもしばしばだった。
 眠りに落ちる直前、朦朧とした意識の中に溶け込んでくるTravels はクセになった。
 一日の終わりが、音楽と共に、まさに「フェイド・アウト」するのだ。
 毎晩こんな調子だったので、最初、僕にとってこのアルバムは、
 「聴くもの」ではなく、「聞こえてくるもの」だった。
 そんなある時、初めてこれを明るい日の下で聴いた。
 しかも、ポータブルのヘッドフォン・ステレオを使っていたので、音は耳元に「直」である。
 すると、それまで気がつかなかったいろいろな音が手にとるように見えてきた。
 細部にわたって計算しつくされて出来上がった曲は、
 それぞれが繊細な一反の織物のようだった。
 一音一音、神経を尖らせて聴いて、そうした織物を今度は逆に丁寧にほぐしてゆくのである。
 それまでとはまた違った楽しみができて、Travels は聴くためのアルバムになった。
 とはいえ、今でもときどきフェイド・アウトのお供となっているので、
 相変わらず聞こえてくる音楽でもある。
 こうしてTravels は、僕にとって、まったく異なる2つの顔を持ったアルバムになった。
 夜の顔と昼の顔。聞こえてくる音楽と聴くための音楽。
 1枚(正確には2枚組)で2度おいしい。愛聴盤になったのも当然か。


The Very Best of Original Love / オリジナル・ラヴ(1995年)

 ある時ふと、自分が好きな曲というのはどんな曲なのだろうと考えたことがあった。
 しばらくして思い至ったのは、
 そのベースラインを実際に弾いてみたいと思う曲だ、ということだった。
 例外もあるだろうが、これが自分の中の「ひとつの基準」になっていることは確実だ。
 趣味でベースを弾いていることもあって、音楽を聴く時には、自然とベースラインに耳が行く。
 「あ、このベースいいな」と思う曲、それはほぼ間違いなく自分が弾いてみたいと思う曲だ。
 そしてそうした曲が自分にとっての好きな曲になっている場合が多い。
 お気に入りのベースが、自分の技量をはるかに超えたものであってもかまわない。
 弾けるかどうかではなくて、弾きたいかどうかなのだから。
 さて、オリジナル・ラヴのこのアルバム、好きな曲のオンパレードだ。
 弾きたい曲が次から次へと出てくる。
 実際、ベースを手に取って、まるまるコピーをした曲が15曲中6曲もある。
 ちなみに、それは以下の通り。
 夜をぶっとばせ
 スキャンダル
 サンシャイン・ロマンス
 ヴィーナス
 朝日のあたる道
 Winter’s Tale 〜冬物語〜
 どれもみんなそれほどまでに好きな曲なのである。

Live / Donny Hathaway(1971年)
 言わずと知れた名盤中の名盤。
 だからこれは、「あなたにとっての名盤」というだけでなく、
 間違いなく「みんなにとっての名盤」である。
 こんな乱暴なことを言い放てるのも、
 このアルバムに寄せられたあれやこれやの賞賛の言葉が、
 ウソでも、誇張でもないことを確信しているからだ。
 8曲中カバーが3曲あるが、
 どれも見事に「ダニーの曲」になっているところがすごいところである。
 そんな中、やはり何と言ってもWhat’s Going On。
 怖くてふつう誰も手を出さないこんな曲も、
 ご本家をすっかり忘れさせる出来になっているのには驚いた。
 もはや比較することなど無意味である。「別の曲」なのだから。
 ダニーのWhat’s Going Onはそんな域に達している名演である。
 未到の領域をあっさり通過して、別の新たな領域を作り出してしまった、とでも言うべきか。
 この「みんなにとっての名盤」はまた、「ベーシストにとっての必聴盤」でもある。
 雑誌の特集でも常連だ。
 全曲、ベースのパートだけを聴いていても、決して飽きることがない。
 こんな演奏をしてくれたウィーリー・ウィークスにはただひたすら感謝である。

 
 
<08・4・26>